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ヒトの世界において、サプリメントは一部の人たちを除いて、一般生活の一部として完全に定着しつつある。(一部の人たちとは、つまり定着しない人たちとは・言いにくいことだが私と同業の方々である)ドラッグストアやコンビニエンスストアでは実に多くのサプリメントが陳列されており、また新聞広告でその宣伝を目にしない日はないといっても過言ではない。
サプリメントに明確な定義はないが、「成分を抽出した食品」であり、無機質とビタミン類が主体である。しかしながら、その効果・効能を謳うことは薬ではないために不可能であり、各社苦心の表現でその効果・効能を想像させる方法で広告媒体に登場させているというのが現状である。少し前までは、健康補助食品には“うさんくさい"イメージが付きまとったが、サプリメントという言葉が使われ始めてからは一般の人々の問では少なくとも良好なイメージをもって使われているはずである。
それゆえに、市場は5,000億円とも数兆円ともいわれているのである1)。

私の専門は整形外科である。“整形外科'はしばしば“形成外科"と混同される。また、よく間違えられたり(我々サイドから見て)、同一視されるのはいわゆる骨接ぎである。整形外科とは骨・関節・筋肉・神経を専門に扱う機能再建外科である。形成外科にはさらに非常に細かい機能再建に関わり、そこには美醜を伴うものも含まれるであろう。骨接ぎは全く医者とは無関係である。
さて、その整形外科から見た骨と関節の健康とはなんであろうか。体を支える大黒柱である骨。骨と号とが接することで関節を成し、しなやかな体の動きをつくりだす。加齢や生活習慣の乱れ、栄養バランスの崩れからくる骨の脆弱性、関節の拘縮を少しでも長持ちさせることが骨と関節の健康ということができる。
一般に、骨に有効とされているものにはグルコサミン、コンドロイチン、コラーゲン、キャッツクロー、メチルスルホニルメタン、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなどがあげられる。カルシウム、ビタミンD、ビタミンKは医薬品として扱われている。これら以外でエビデンスが得られているものはグルコサミンであろう。

グルコサミンはカニ・エビなどの甲殻類の殻を原料とする。殻を希塩酸で脱カルシウムし、次いで希水酸化ナトリウムで脱たん白することにより得られたキチンをさらに濃塩酸で加水分解することでグルコサミンとなる。
動物実験的にまず特筆されることは、関節軟骨に対する効果である。ウサギの関節軟骨にドリルで穴を開け、損傷させた軟骨の再生過程がコントロール群と比較してグルコサミン投与群で有意に改善を認めた報告がある2)。また、軟骨が修復されることによる除痛効果もさることながら、筆者は特に臨床においてはグルコサミンの白血球機能抑制による抗炎症作用3)〜5)に注目している。グルコサミンは種々の好中球機能を抑制することにより炎症にともなう組織障害を防いていると考えられている。報告によれば、ヒト好中球にグルコサミンを添加したものでは活性酸素の生成が抑制され、また好中球の貧食機能そのものが抑制されている。さらには関節リウマチの動物モデルであるアジュバントラッド関節炎において、リウマチ特有の炎症性肉芽組織であるパンヌスの形成をグルコサミンが抑制するという報告もある6)。
筆者の医院において2000年から2年間追跡可能であった膝の軟骨を消耗させてしまった変形性関節症患者169名では、痛み止めを使った群とグルコサミンを内服した群での比較でグルコサミン群が有意であったのは7)、これらが理由と考えている。
グルコサミンの血小板機能に対する報告もある8)。グルコサミンは血小板内のカルシウムの動員、顆粒成分の放出、トロンボキサンの合成阻害により血小板凝集を抑制すると考えられている。血小板凝集抑制とは簡単にいえば、血液の流れをなめらかにする、サラサラにするということを意味する。決して怪我をした時の出血が止まりにくいという意味ではない。これは室内のみで飼育され肥満した、いわゆる人でいうところの成人病に近い状態のペットにとってかなりの朗報といえよう。

現在までのサプリメントのマーケットはその対象がほとんどヒトであることは明らかである。それらのサプリメントをはたしてそのままペットに応用できるのかという疑問が生じることは不思議ではない。
グルコサミンのようにエビデンスが得られているサプリメントは、まずどのようにしてエビデンスを得ているのだろう?当然のことながらラットやウサギなどを使った動物実験が行われている。それらの動物実験の結果からヒトヘの応用が始まるわけであるから、その道として犬などの動物に効果がフィードバックされてもなんら不思議なことではない。犬の加齢による活動量の低下は膝関節の変形性関節症をもたらす。それに対してグルコサミンの軟骨の生成促進作用が効果を示すであろう。ダックスフンドなど前後の脚が短いタイプの高齢犬に多いという腰痛には、グルコサミンの抗炎症作用が鎮痛効果をもたらすであろう。前にも述べたように、ヒトでいうところの成人病予備軍化した運動不足犬には種々の合併症の予防としてグルコサミンの血小板凝集抑制作用が期待できる。
グルコサミン摂取の注意点として、まず摂取量があげられる。通常、成人では男女とも1日量1,500mgの経口摂取をすすめている。それを基にすると、1日量は25kg以上の大型犬では1g,15kg以上の中型犬で0.5g、それ以下では0.3gぐらいが適量ではないだろうか。
ヒトでは甲殻類に対するアレルギーが問題となるが、この8年間の筆者の経験では、ヒトでの甲殻アレルギーはまったく問題となっていない。したがって、犬に用いる場合も特に甲殻類に対するアレルギーというよりは、むしろ口から入る一般の食物に対する通常のアレルギーの有無という立場で摂取後の状態に注意を払えばよいのではないだろうか。
サプリメントとしてグルコサミンを選択する場合、やはり混合物がない、できるだけグルコサミン単独からなるものが望ましい。内容物に多種類の物質が含まれている場合、ヒトに対しての経験では、お互いが異物・混合物となるせいか単独のものよりも効果が少ない印象がある。そもそも、エビデンスがあるのはグルコサミンなのだから。

1)サプリメント積乱.週刊東洋経済,5934,東洋経済新報社,26-44(2005)
2)Tamai,S et al.:Enhanced healing of cartilaginous injuries by glucosamine
hydroch1oride. Carbohydrate Po1ymers
48,369-378(2002)
3)Hua,J et al.:Inhibitory action of g1ucosamine a therapeu-tic agent for
osteoarthritis on the functions of neutrophils.
J.LeukoμBio 71,632-640(2002)
4)長岡功ら:グルコサミンの好中途機能抑制とそのメカニズム.日本炎症・再生医学会誌22(5),461-468(2002)
5)長岡功ら:グルコサミンの好中球機能と血流速度におよぼす影響.日本ヘモレオロジー学会誌5(1),23-30(2002)
6)勝呂 :ラットアジュバント関節炎に対するグルコサミンの効果.キチン・キトサン研究9(2),114(2003)
7)菅原忍:変形性膝関節症に対するグルコサミン塩酸塩の有効性.整形・災害外科49(4),383-387(2006)
8)華見ら:グルコサミンの血小板機能に及ぼす影響.日本炎症・再生医学会誌23(3),164-169(2003)
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