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宮廷料理長が腕をふるってり上げた牛の腰肉(ロイン)料理の醍醐味を讃えた英国王ヘンリー8世は剣を抜いて、その先を肉魂にあてサー(騎士)の称号を与える儀式を行い、それ以後、牛の腰上部の肉は「サーロイン」と呼ばれるようになったということですが、英国人が牛肉を好むのは本当なようです。
その牛飼育のために羊の脳や内臓からなる飼料が古くから使われていました。18世紀前半からその羊にスクレイピーという名の病気で流行性の運動失調症が見られ始め、実はこれが海綿状脳症でした。
1913年ドイツ人クロウツフェルトが、足がもつれ意識障害がひどくなり2ヶ月余りで死亡した患者の脳に、無数の小孔が開きスポンジ状になっているのを発見し、発表しました。
1921年には同じドイツ人ヤコブが同様の症状の患者のことを発表しました。これが、クロウツフェルト−ヤコブ(Creutsfeldt-Yacob)病です。この病気は、現在では脳外科手術時に使用されたヒト乾燥硬膜による感染が有名ですが、日本での発生頻度は年間100万人に1人という稀な病気です。 しかしながら、山梨県・静岡県の富士川流域に家族性にも見られる例があります。
スクレイピーが見られ始まったころ、パプアニューギニアの高地に住むある部族に同じ症状が出現していました。クールー病と言い、その部族には肉親に対する愛情の表れとして主に女性と子供が遺体を食べる儀式的習慣があり、この病気で死んだ人はやはり海綿状脳症でした。そして、1986年に英国を中心に羊の病原体が飼料を通じて牛に感染し、牛海綿状脳症(BSE bovine
spongiform encephalopathy)へと発展しました。
スクレイピー、クロウツフェルト−ヤコブ病、クールー病、そしてBSEといずれも感染源はプリオンという蛋白です。そのしくみは、脳内の正常型プリオンが異常型プリオンに接触すると正常型の構造が異常型に変換し、次々に増加すると考えられています。
しかしながら、外から侵入した邪教祖異常型プリオンに教化されず、”教祖”に抵抗して正常プリオンのままでいられる人は発病しないことになります。
私が学生の頃は、これらの病気は原因不明のヴィールス(virus)が感染し、ゆっくりゆっくり脳をむしばんでいって、ついには症状を起こすということでslow
virus infectionという名で講義を受けました。
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